Elizebth Bowen


エリザベス・ボウエン

last updated: 6 June 2017

Biography +++

【生没】 1899.6.7 - 1973.2.22 (亥年生まれ、享年73歳)
【家族】 アングロ・アイリッシュの地主階級ボウエン一族の末裔。13歳で母を亡くした後は、伯母に育てられた
【故郷】 アイルランドのダブリンで生まれ、7歳の頃、母親と2人でイングランドへ移住。
【仕事】 1930年、父の死により、一族の屋敷Bowen's Court初の女性継承者となる。1952年の夫の死後、屋敷の維持管理のためアメリカで講師として働いたが、1959年には売りに出し、翌年取り壊された。
【結婚・出産】 23歳の時、6歳年上のAlan Cameronと結婚。
【交友】 41歳の時、7歳年下のカナダ人外交官Charles Ritchieと出会い、30年以上交際を続けた。ブルームズベリ・グループと交流があり、ウルフマードックらが屋敷を訪れたこともある。
【功績】 1948年CBE勲章受章。

 

Bibliography +++

#1The Hotel (1927)
オースティンの風習喜劇の伝統を採用した。
#2The Last September (1929)
Bowen's Courtがモデル。ビッグハウス小説(Big House Novels:アイルランド文学によく見られるジャンル。M.エッジワースの『ラックレント城』が起源とされる。)アイルランド問題を背景に描かれている。1999年映画化(ジェーン・バーキンJane Birkin出演)。
最後の九月』 太田良子(訳) <而立書房・2016>
#3Friends and Relations (1931)
#4To the North (1932)
#5The House in Paris (1935)
1959年BBCドラマ化。
パリの家』 阿部知二・阿部良雄(訳) <世界文学全集15;集英社・1967/集英社文庫・1977>
パリの家』 太田良子(訳) <晶文社・2014>
#6The Death of the Heart (1938)
16歳で両親と死別したPortiaポーシャは、新生活の場で見聞きしたことを詳細に日記に綴っていく。
心の死』 太田良子(訳) <晶文社・2015>
#7The Heat of the Day (1949)
『日ざかり』 吉田健一(訳) <新潮社・1952>/太田良子(訳) <晶文社・2015>
1988年映画化「デスヒート スパイを愛した女」

「はたしてこのふたりは、もっとよい時代ならもっとよく愛し合えただろうか?」
【あらすじ】第二次世界大戦下のロンドン。陸軍に入った息子を持つステラには、年下の恋人ロバートがいる。夫とは遠い昔に別れた。ところがある日、ハリソンという男が、ロバートは敵国に情報を漏らしているから早く関係を断つように迫ってくる。下心が見え隠れするハリソンの言ったことを信用できず、ステラは猜疑心を抱えたままロバートとの関係を続けてしまう。
ステラの息子が引き継いだ、モリス山荘というビッグハウスも登場する。

訳者、太田氏が『日ざかり』の関連書籍として、あとがきで触れた3冊
 『回想のブライズヘッド再訪』 ボウエンの友人イヴリン・ウォーが1945年に発表
 『日の名残り』 カズオ・イシグロのブッカー賞受賞作“The Remains of the Day”
 『贖罪』 作中にボウエンの名が登場

翻訳書で読みました【感想】哲学書でも読んでいるのかと思えてきました。まわりくどい文章に慣れるまでは、さらさらと読み進めないと挫折します。一文一文をきちんと理解しようと思うと、まったく前へ進めなくなります。長いセリフ回しから、状況を推測するよう求められます。読者を選ぶ小説です。ボウエンに挑む気概がある人だけ、読んでみよ!という感じです。思考が成熟した人だけが味わえる特権ですね。
三角関係の話ですが、わかりやすいラブシーンはありません。ロバートとハリソンが直接対峙する場面がないのです。2人の男性は、それぞれステラと意見を戦わせることで、間接的に争っています。
私も、思想を言葉でぶつけあうような関係に憧れます。安直に結論を言わない人から真意を探るワザを磨きたいなと思います。
一度ただ読んだだけでは、2~3割しか理解できていません。でも、すぐに再読できるほどのエネルギーはまだ湧いてきません。ただ、ボウエン節に慣れているうちに、もう1回読んだ方が理解が深まりやすそうな気はしますね。
【幸福指数 40%  陰鬱指数 60%  恐怖指数 5%  幻想指数 0%】

 →「エリザベス・ボウエンの『日ざかり』が映画になっていた」 訳者吉田健一のあとがきが抜粋されています。

#8A World of Love (1955)
『愛の世界』 太田良子(訳) <ボウエン・コレクション;国書刊行会・2009>
亡き当主をめぐる三角関係。モントフォートを舞台としたビッグ・ハウス小説。
【あらすじ】アイルランドのビッグハウス、モントフォートにはダンビー一家が暮らしていた。他人がハウスシェアしているような、よそよそしい家族たち。ある日、娘のジェインが古い手紙を見つけ出す。それは、第一次世界大戦で戦死した前当主ガイ・ダンビーの恋文だった。宛名がなく、誰にあてたものだったのか分からない。この手紙をめぐり、ジェイン、ガイの元婚約者でジェインの母であるリリア、現当主でガイの従妹アントニアの3人の女性が亡霊を追ってさまよう。

   

翻訳書で読みました【感想】謎は残ったままだし、最後は突然の幕切れでスッキリしません。なだらかな山を登っていて、美しい景色を楽しんでいたら、頂上がどこだかわからないうちに下山していた、という気分です。情景描写がきれいで、絵画を読んでいるような感覚に浸っていました。でも、ストーリー自体は不思議というか不気味です。20歳の娘が会ったこともない死人に恋をしてしまいますから。しかも、それで母親を挑発するんです。一度読んだだけでは全くつかめない作品です。
【幸福指数 30%  陰鬱指数 70%  恐怖指数 5%  幻想指数 50%】

#9The Little Girls (1964)
『リトル・ガールズ』 太田良子(訳) <ボウエン・コレクション;国書刊行会・2008>
#10Eva Trout, or Changing Scenes (1968)
『エヴァ・トラウト』 太田良子(訳) <ボウエン・コレクション;国書刊行会・2008>
1970年ブッカー賞最終候補作、1969年ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞。
【あらすじ】エヴァ・トラウトは、幼い頃から父親に連れられて世界中を転々とした。父亡き後は、莫大な遺産で自由奔放に暮らす。 24歳の時、元英語教師イズーの家に身をおくものの、突然家を出、8年後には不法な方法でもらいうけた養子ジェフリーとともに、まるで逃げるように各地を転々とする。彼女の周囲の人たち、イズーと彼女の夫や後見人のコンスタンティンは、彼女の言動に終始振り回される。

   

翻訳書で読みました 【感想】一度読んだだけでは、到底理解できない作品でした。何が真実なのか、何が悪なのか、自分の判断力が鈍ったような感覚になりました。一見、エヴァを中心として世界は回っているような風にもとれますが、実際は彼女が臆病で周囲に翻弄されているのかもしれません。エヴァの不可解な行動は、何を意図しているのか。絶えず、数多くの謎が降り注いでいました。
初めて読むボウエン作品として選ぶのには適していないように思います。彼女の代表作といわれる『パリの家』や『日ざかり』が気に入り、より多くのボウエン作品を読みたい方にはいいのではないでしょうか。

 

Collection +++

#1Encounters (1923)
#2Ann Lee's and Other Stories (1926)
#3Joining Charles and Other Stories (1929)
#4The Cat Jumps and Other Stories (1934)
#5Look at All Those Roses: Short Stories (1941)
あの薔薇を見てよ ボウエン・ミステリー短編集』 太田良子(訳) <ミネルヴァ書房;MINERVA世界文学選・2004>
「あの薔薇を見てよ」「アン・リーの店」「針箱」「泪よ、むなしい泪よ」「火喰い鳥」「マリア」「チャリティー」「ザ・ジャングル」「告げ口」「割引き品」「古い家の最後の夜」「父がうたった歌」「猫が跳ぶとき」「死せるメイベル」「少女の部屋」「段取り」「カミング・ホーム」「手と手袋」「林檎の木」「幻のコー」全20編。
#6The Demon Lover and Other Stories (1945)
幸せな秋の野原 ボウエン・ミステリー短編集2』 太田良子(訳) <ミネルヴァ書房;MINERVA世界文学選・2005>
「親友」「脱落」「そしてチャールズと暮らした」「バレエの先生」「ワーキング・パーティー」「相続ならず」「彼女の大盤振舞い」「ラヴ・ストーリー一九三九」「夏の夜」「悪魔の恋人」「幸せな秋の野原」「蔦がとらえた会談」「あの一日が闇の中に」全13編。
#7Stories by Elizabeth Bowen (1959)
#8A Day in the Dark and Other Stories (1965)
#9Elizabeth Bowen’s Irish Stories (1978)
#10The Collected Stories of Elizabeth Bowen (1980)
#11The Bazaar and Other Stories (2008)

 

ボウエン幻想短篇集 太田良子(訳) <国書刊行会・2012>
幻想譚「ラッパ水仙」「陽気なお化け」など17篇のほか、幻想文学論、短篇小説論などを含むエッセイ4篇を収録。
猫は跳ぶ イギリス怪奇傑作集 橋本槙矩(訳) <福武文庫・1990>
ボウエンの"The Cat Jumps"ほかコナン・ドイルなど全9作品を収録。
『悪夢の家 怪奇小説の世紀第1巻』 西崎憲(編) <国書刊行会・1992>
ボウエンの「陽気なる魂」ほか、本格的怪奇小説短編全12作品を収録。
怪奇小説日和 黄金時代傑作選』 西崎憲(訳) <ちくま文庫・2013>
ボウエン「陽気なる魂」など全18作品を収録した本格的怪奇小説アンソロジー。
怪談の悦び 南條竹則(訳・編) <創元推理文庫・1992>
ボウエンの"The Demon Lover"(魔性の夫)ほか全13作品を収録。
『現代小説集 世界文学大系第99巻』 <筑摩書房>
ボウエンの「追いつめられて」「鳶からむ石段」(村松達雄訳)ほか全30作品を収録。

 

References +++

Bowen's Court: Memories of a Dublin Childhood300年に及ぶボウエン一族の年代記
Bowen's Court: Memories of a Dublin Childhood
Elizabeth Bowen
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