Elizabeth Gaskell


エリザベス・ギャスケル

last updated: October 30, 2018

Biography +++

【生没】 1810.9.28 - 1865.11.12 (午年生まれ、享年55歳)
【家族】 両親ともユニテリアン派(三位一体説を否定し、キリストの神性も否定したリベラルなキリスト教宗派)。1歳で母を亡くして以後、ナッツフォードで伯母に育てられた。ナッツフォードはギャスケル作品の随所に描かれている。12歳年上の兄は、早くからギャスケルの文筆の才能を認めていたが、インドで消息を絶つ。
【結婚・出産】 21歳でユニテリアン派副牧師ウィリアム・ギャスケルと結婚。初めて生まれた息子の急死を契機に、小説を書き始める。
【仕事】 移り住んだ大産業都市マンチェスターの悲惨な生活に刺激され、夫と詩"Sketches among the Poor"「貧しい人々に囲まれてのスケッチ」を書き、これが公刊された最初の作品となった。
【交友】 デビュー作が好評を博して以降、ディケンズ、サッカレー、C.ブロンテG.エリオットらと交流を続けた。

【リンク:ギャスケル夫人が住んだ家!19世紀の内装で一般公開中。おさわりし放題!

 

Novels +++

#1Mary Barton: A Tale of Manchester Life (1848) おすすめ
『メアリ・バートン - マンチェスター物語』 松原恭子・林芳子(訳) <彩流社・1998>
『メアリー・バートン』 相川暁子 ほか(共訳) <近代文芸社・1999>
『メァリ・バートン-マアチェスタ物語』(上・下) 北澤孝一(訳) <本の友社;復刻版・1998>
1834~43年頃の労働運動を背景とした、マンチェスター貧民の哀歓。ギャスケルの意に反し、社会小説として一躍ベストセラーとなった。地方色強い地域小説(エッジワースが源)でもある。二巻本で匿名出版。

労働者ジョン・バートンは、極貧生活の中、次第に雇用主への反感を募らせて、組合活動に没頭していく。一方、娘のメアリはお金持ちな美青年カースンとの恋愛にうぬぼれていたが、幼なじみジェムへの真の愛に気づく。そしてジェムがカースン殺害の容疑がかけられた時、彼の無実を証明しようと全てをかけて行動する。

『ヴィクトリア朝小説と犯罪』
殺人と売春-ギャスケル『メアリー・バートン』 ほか

翻訳書で読みました原書で読みました 社会小説として高い評価を得ている作品ですが、ヒロイン・メアリの成長物語という面もあります。お金持ちで人当たりがよく、容姿も整ったカースン青年と、家族思いで優しく勇敢な労働者ジェム。メアリが人生のパートナーとしてジェムを選んだのは、メアリへの愛情がより強くホンモノだったからだと思います。
 長い話ですが、読み進めていくうちに引き込まれていってしまいます。
#2Cranford (1853)
『女だけの町』 小池滋(訳) <岩波文庫・1986>
『女だけの町 -クランフォード-』 川原信(訳) <角川文庫・1953>
ディケンズの依頼で、彼の週刊誌『ハウスホールド・ワーズ』に9回に分けて断続的に連載された(1851~53)。元は独立短篇。ナッツフォードがクランフォードのモデル。

クランフォードは大商業都市ドランブルから20マイル離れたところにある、小さな田舎町。住人がほとんど女性で、「男って、家にいるととってもじゃまね」と口を揃える。誰もが上品につましく暮らしており、たとえ貧乏であってもそんなことはおくびにも出さず見栄をはり、訪問規則はきっちり守られている、とても平和な町だった。そんな平凡な町を巡るささいな出来事---大胆な大尉のこと、婦人の昔話、奇術師の登場、空き巣事件、破産などを、よくクランフォードを訪れるメアリー・スミスが淡々と語る。

■作中で話題になる文学作品
『ピックウィック・ペイパーズ』 (ディケンズの出世作)
 訳→『ピクウィック・クラブ』上中下 北川悌二(訳)・ちくま文庫
『ラセラス』 (ジョンソン博士の教訓小説)
 訳→『幸福の探求 : アビシニアの王子ラセラスの物語』 朱牟田夏雄(訳)・吾妻書房

翻訳書で読みました とても心穏やかに読めます。気休めにちょっと・・・という時にもってこいですね。ご婦人方の見栄や階級意識、勘違い、噂話がユーモアたっぷりで描かれています。語りが客観的なおかげで、深く入り込むこともなく外側からクランフォードの騒ぎようを見物できます。展開の緩やかさに少し物足りない気もしますが、清々しい気持ちにはなれました。それはたぶん、彼女たちの悪気のなさ、心からの善意、素直さによるものでしょう。

【リンク:新ヴィッキーの隠れ家 読書感想文

#3Ruth (1853)
未婚の母となる針子ルース・ヒルトンの悲劇。
『ルース』 阿部幸子・角田米子・宮園衣子・脇山靖恵(訳) <近代文芸社・2009>
#4North and South (1855)
イギリス北部の産業地帯と南部の農業地帯を比較。1854~55年、『ハウスホールド・ワーズ』に連載。ディケンズ『ハードタイムズ』同様、53・54年に起きたプレストン・ストライキを題材にした産業小説。マーガレット・ヘイルの精神的成長を描いた教養小説。

「この小説は二人がそれぞれ正しい認識に到達するプロセスを描いたものです。」(『もうひとつのイギリス史』p164より引用)
『もうひとつのイギリス史』>p153~169に、『北と南』が都市と農村の人間関係の違いがよくわかる作品として紹介されている。

【リンク:ディケンズのたくらみ -ギャスケルの『北と南』のタイトルをめぐって-(論文PDF)

#5Sylvia's Lovers (1863)
10世紀末、イギリスの漁港モンクス・ヘイヴン。酪農家の娘シルヴィアと、彼女を愛するフィリップ、そしてシルヴィアの婚約者チャーリーの真剣な愛の話。歴史小説。
『シルヴィアの恋人たち』 大野龍浩(訳) ギャスケル夫人の年譜付き<彩流社・1997>
#6A Dark Night's Work (1863)
『悪夢の一夜』 朝川真紀・中村美絵(訳) <近代文芸社・2003>
#7Wives and Daughters (1866)
未完。

 

Collection +++

Lizzie Leigh and Other Tales (1855)
Round the Sofa (1858)
Right at Last and Other Tales (1860)
Cousin Phillis and Other Tales (1865)
「従妹フィリス」は63~4年に『コーンヒルマガジン』に掲載された娘の失恋を描いた中編。舞台のモデルはナッツフォード近郊。
『従妹フィリス』(Ⅰ・Ⅱ) 海老池俊治(訳) <研究社・1970>
The Grey Woman and Other Tales (1865)

 

『ギャスケル夫人短篇集』 田部重治(訳) <改造社・1942>
「寺男の観た英雄」「地主物語」「マンチェスターの結婚」「最後の解決」「異父兄弟」 収録
『E・ギャスケル短編集―呪われた人々の物語』 伊達安子・杉山直之・足立万寿子(訳) <近代文芸社・1994>
「乳母物語」「呪われた種族」「ブリジェットの呪い」「グリフィス家の悲運」 収録
『ギャスケル短編集』 松岡光治(訳) <岩波文庫・2000>
「ジョン・ミドルトンの心」「婆やの話」「異父兄弟」「墓掘り男が見た英雄」「家庭の苦労」「ベン・モーファの泉」「リジー・リー」「終わりよければ」 収録

『ヴィクトリア朝幽霊物語』(松岡光治・編訳)に収録されている「婆やの話」がPDFで一般公開されています。【リンク:婆やの話(エリザベス・ギャスケル)

 

『ギャスケル全集』 日本ギャスケル協会設立10周年記念出版 <大阪教育図書>
第1巻:『クランフォード』(小池滋)と短篇(「従妹フィリス」「荒野の家」「魔女ロイス」「灰色の女」「リジー・リー」「異父兄弟」「マンチェスターの結婚」「地主物語」)第2巻:『メアリ・バートン』 (直野裕子)第3巻:『ルース』 (巽豊彦)第4巻:『北と南』 (朝日千尺)第5巻:『シルヴィアの恋人たち』 (鈴江璋子)第6巻:『妻たちと娘たち』 (東郷秀光・足立万寿子)第7巻:『シャーロット・ブロンテの生涯』 (山脇百合子)

 

Other +++

The Life of Charlotte Bronte (1857)
友人C.ブロンテの死後、執筆した伝記。
シャーロット・ブロンテ伝』 <北星堂書店・1990>
シャーロット・ブロンテの生涯』 和知誠之助(訳) <山口書店・1980>

 

References +++

                       

英米文学研究叢書 E.ギャスケルの長編小説』 中村祥子(訳) <三友社出版・1991>
 (参考文献)ギャスケル夫人が書いた6編の長編小説を、時代背景やテーマに則して1作ずつ分析した著作。

ギャスケルのまなざし』 ギャスケルとナイチンゲール-『ルース』を接点として/病い、死、そしてアリス-『メアリ・バートン』など