Iris Murdoch


アイリス・マードック

last updated: 21 September 2015

Biography +++

【生没】 1919.7.15 - 1999.2.8 (未年生まれ、享年79歳)
【教育】 オックスフォード大学で哲学を学び、一級優等学位を取得。ケンブリッジ大学でも院生として哲学の勉強を続けた。その後、オックスフォードで15年間哲学の教鞭をとった。
【結婚・出産】 1956年、ジョン・ベイリーと結婚。夫婦で何度か来日したこともあった。
【功績】 1976年CBE、1987年DBE勲章受章。2008年タイムズ紙の「戦後の偉大な英国人作家50人」の12番目に選ばれた。マードックの小説は、ディケンズやG.エリオットなど19世紀の小説家の影響を受けている。
【映画】 マードックの人生は2001年に映画化された。『アイリス』(ジュディ・デンチ主演)

 

Novels +++

#1Under the Net (1954)
下請け翻訳業で細々と暮らす30歳の独身男性ジェイクが、ロンドンとパリで数々の奇想天外な事件を経験する。チェルトナム文学賞受賞。"Angry Young Men"「怒れる若者たち(第二次大戦後の社会体制などに反発した人たち)」の代表作品。
『網のなか』 鈴木寧(訳) <新しい世界の文学28;白水社・1965/白水社世界の文学・1979>
#2The Flight from the Enchanter (1956)
『魔術師から逃れて』 井内雄四郎(訳) <太陽選書11;太陽社・1969>
『魅惑者から逃れて』 井内雄四郎(訳) <改訳、集英社文庫・1979>
#3The Sandcastle (1957)
有能な教師ウィリアムは家族との関係がうまくいかず、妻の反対で国会議員立候補の野望も果たせない。そんな時20歳年下の女流画家に出会い、夢中になる。
『砂の城』 栗原行雄(訳) <太陽選書2;太陽社・1968>/<集英社文庫・1978>
#4The Bell (1958)
『鐘』 丸谷才一(訳) <集英社文庫・1967/現代の世界文学;集英社・1969>
ペーパーバックガイドの「アイリス・マードック」に"The Bell"原書の詳しい紹介があります。

翻訳書で読みました 【感想】「ドーラ・グリーンフィールドが家出したのは、夫がこわかったからだ。」という冒頭を読むと、この作品は夫に怯える不器用な妻ドーラの逃避を描いたものなのだろうか、という印象を持つ人が多いと思います。確かにそうなのですが、読み進めるにしたがってもう一つの主軸が表れてきます。国教会系の本拠インバー・コートで信仰会のリーダーを務めるマイクルの同性への愛情に悩まされる苦しみです。このインバー・コートを訪れている夫ポールの元へしぶしぶドーラがやってきたことで中心となる二人が交錯します。偶然ドーラと同じ時にインバーへやってきた少年トビーが湖底に沈む古い鐘を見つけます。そのことを好意を抱いていたドーラに打ち明けると、彼女はその鐘はポールから聞いた伝説の言います。そこで二人は数日後に新しくやってくる鐘と古い鐘とを取り替えるという計画を内密に進めていきます。一方、マイクルは思わずキスしてしまったトビーとずっと昔に関係を持ったニックとの間で揺れ動きます。新しい鐘が設置される当日、誰もが予想しえなかった事件が発生し、インバーの時間は目まぐるしく動いていきます。ようやく一段落ついた頃、インバーに残っていたのはドーラとマイクルの二人でした。
 

 

#5A Severed Head (1961)
1971年に映画化。
『切られた首』 工藤昭雄(訳) <新潮社・1963>
#6An Unofficial Rose (1962)
『野ばら』 菅原時子(訳) <サンリオ・1983>
#7The Unicorn (1963)
ゲイズ邸に半ば軟禁状態で暮らす孤独な人妻ハナの元に、雇われた教師メアリアンがやってくる。
『ユニコーン』 栗原行雄(訳) <女のロマネスク2;晶文社・1973>
#8The Italian Girl (1964)
『イタリアの女』 中川敏(訳) <冬樹社・1966> 『イタリアの娘』 石田幸太郎(訳) <英宝社・1988>
#9The Red and the Green (1965)
アイルランド独立史上有名な事件が背景。
『赤と緑』 小野寺健(訳) <今日の海外小説;河出書房新社・1970>
#10The Time of the Angels (1966)
『天使たちの時』 石田幸太郎(訳) <筑摩書房・1968>
#11The Nice and the Good (1968)
ブッカー賞候補。ある一夏の、ロンドンでの自殺の真相究明とドーセット邸での人間模様。
『愛の軌跡』 石田幸太郎(訳) <創元社・1972>
#12Bruno's Dream (1969)
『ブルーノーの夢』 中川敏(訳) <筑摩書房・1970>
#13A Fairly Honourable Defeat (1970)
#14An Accidental Man (1971)
#15The Black Prince (1973)
小説家が書く自らの30歳年下の女学生との恋物語。ブッカー賞候補。ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞。シェイクスピアの『ハムレット』を下敷きとしている。
『ブラック・プリンス』 鈴木寧(訳) <講談社・1976>
 参考⇒『アイリス・マードック『黒衣の王子』論:「藪の中」の系譜』
#16The Sacred and Profane Love Machine (1974)
『愛の機械』 鈴木寧(訳) <現代の世界文学;集英社・1979>
#17A Word Child (1975)
『魔に憑かれて』 中川敏(訳) <現代の世界文学;集英社・1979>
#18Henry and Cato (1976)
『勇気さえあったなら』 栗原行雄(訳) <現代の世界文学;集英社・1980>
#19The Sea, the Sea (1978)
演劇界の神Charles Arrowbyが輝かしいロンドンを離れ、隠遁者になるべく海へ向かう。ブッカー賞受賞。表紙に葛飾北斎の波の絵が使われた。
『海よ、海』 蛭川久康(訳) <上下、現代の世界文学;集英社・1982>
#20Nuns and Soldiers (1980)
#21The Philosopher's Pupil (1983)
#22The Good Apprentice (1985)
#23The Book and the Brotherhood (1987)
『本をめぐる輪舞の果てに』 蛭川久康(訳) <みすず書房・1992>
ブッカー賞候補。
【あらすじ】偉大な本を書こうとしているクリモンドを経済的に支援しようと、オックスフォードの学友たちで結成したグループのメンバーをめぐって事件が起こっていく。ダンカンの妻ジィーンを2度もクリモンドが奪ったことで、長年の支援に対しる疑問が生まれ始める。いつまでたっても完成しない本にいらだちを感じるローズたちをなだめるジェラードやジェンキンたちにも、様々な問題が立ちはだかる。そして全ての事柄が遠く離れたところでお互いに結びついていく。

 

翻訳書で読みました 【感想】話の中心となる人物が多く、読むのに頭を使いました。細かいエピソ-ドが複雑に絡み合い、あらゆることが別の事件に起因するという、難しいけれどとても読み応えのある小説です。感情の駆け引きは誰もが悩むこと、それが鮮明に描写されている感じです。

 

#24The Message to the Planet (1989)
#25The Green Knight (1993)
#26Jackson's Dilemma (1995)
『ジャクソンのジレンマ』 平井 杏子(訳) <彩流社・2002>

 

Collection +++

『マードック 世界の文学18』 丸谷才一・中川敏(訳) <集英社・1976>
『鐘』『イタリアの女』収録

 

Others +++

『サルトル:ロマン的合理主義者』 田中清太郎・中岡洋(訳) <国文社・1968>
原著: Sartre : romantic rationalist
『火と太陽:なぜプラトンは芸術家を追放したのか』 川西瑛子(訳) <公論社・1980>
原著: The Fire and the Sun : Why Plato Banished the Artists
善の至高性-プラトニズムの視点から
完全性の観念/「神」と「善」について/他の概念に対する善の至高性
アイリス・マードック随筆・対談集

 

References +++