Joanne Harris


ジョアン・ハリス

last updated: 8 October 2016

Biography +++

【生没】 1964.7.3 - (辰年生まれ)
【幼少】 イギリスとフランスのハーフ。食べ物と民間伝承に囲まれて育った。グリム童話やシャルルー・ペロー(17世紀フランスの詩人、『眠れる森の美女』『長靴をはいた猫』など)、民間伝承、北欧神話に影響を受け、幼いころから小説を書き始める。
【仕事】 教職についていた15年の間に3作の小説を発表。2012年には『ショコラ』の大ヒットにより、ミリオネア・クラブ(100万部以上を売り上げた作家だけが所属できる集団)の一員となる。同クラブには他に、J.K.ローリングヘレン・フィールディングが名を連ねる。

 

Bibliography +++

#1The Evil Seed (1989)
#2Sleep, Pale Sister (1993)
#3Chocolat (1999)
『ショコラ』 那波かおり(訳) <角川書店 BOOK PLUS・2001/角川文庫・2002>
food trilogy第一部。彼女の名前を一躍有名にしたベストセラーです。映画化もされ、日本でも有名な作品だと思います。

       

原書で読みました翻訳書で読みました 【感想】フランスの南西部、ガスコーニュ地方にある小さな村ランスクネ・スー・タンヌを舞台にチョコレートが巻き起こすホットな物語です。甘い小説だと思って読んだら、ほろ苦い話でした。読んで実感してください。人間の優しさ、おおらかさだけでなく、醜さや弱さが小さい村の中に見ることができます。この本を読み終わった後(読んでいる途中)、チョコを口にしたくなります。実際にチョコレートは人を幸せにする効能があると科学的に証明されているそうです。話の中でも多くの人がチョコレートマジックにかかっています。その張本人、つまり村にチョコレートの店を開いた女性がヴィアンヌ・ロシェです。(風に乗ってやってきた感じが『メアリー・ポピンズ』を連想させます。)すごく洗練された大人の女性という印象です。彼女に立ちはだかるのがレノー神父です。物語はこの二人の視点から描かれます。2月21日“告解の火曜日”のカーニバルから、3月31日“復活の月曜日”、チョコレートフェスティバル翌日までの40日間にわたって村が変化していく様子が綴られています。娘のアヌーク、口うるさいPTAママのカロリーヌ、不思議な老婆アルマンド、彼女の孫リュック、暴力的なミュスカ、妻で盗癖のあるジョゼフィーヌ、犬を愛するギョーム、ジプシーのルー。彼らはたった40日の間にヴィアンヌの影響を受け、変わっていきます。さらにヴィアンヌとレノー、それぞれの秘めた過去も物語に苦味を効かせています。みなさんもぜひ味見してみてください。翻訳もきれいな日本語で、読みやすいです。
 ※ヴィアンヌ同様、小さな村での因習や教会の権威に負けず戦った女性の物語 『アンナの憂鬱』(ジョアンナ・トロロープ

映画を観ました 映画の方では、ヴィアンヌとジョニー・デップ演じるルーのロマンスが少しクローズアップされていました。ルノーも神父ではなく、村長になっています。本とは違う話だと割り切って見れば、いい映画でした。チョコレートの匂いが画面から漂ってきそうでした。
(監督:ラッセ・ハルストレム 出演:ジュリエット・ビノシュ 2000年・米)

#4Blackberry Wine (2000)
『ブラックベリー・ワイン』 那波かおり(訳) <角川書店 BOOK PLUS・2001/角川文庫・2004>
【あらすじ】food trilogy第二部。作家のジェイは、自らの傑作『ジャックアップル・ジョー』を超える作品を書けず、SFの三文小説を執筆しながらロンドンで暮らしていた。ある日、地下に眠っていた思い出のワイン6本に呼ばれ、封印を解く。そのワインは、少年時代に交流のあった老人ジョーが残したものだった。そして導かれるままに、フランスの片田舎ランスクネへ移り住む。そこで出会った隣人の女性に興味を抱き、作品の構想が湧き上がり、待ちに待った次期傑作の予感が芽生えるが。。
 幼き日の楽しかった思い出に囚われ、ジョーの影を追い求めてランスクネへやってきたジェイ。のどかな自然と特別なワインが、方向性を失った作家に進むべき道を指し示す。

   

翻訳書で読みました 【感想】物語の幕が下りた後、こんなにも幸せな気持ちに満たされるのは、やはりジョアン・ハリスの作品だと改めて実感しました。ワインは決して主役ではなく、ストーリーの潤滑油のような存在です。人の心を開かせる力を持った不思議なワイン。どこで取れた葡萄のワインだとか、何年もののワインだとかいうような話は一切出てこないので、私のようなワインには全く無知な人間でも理解できない部分などはありません。
 この作品で感じたのは、女性の凛々しさでした。主人公のジェイは臆病で小心者。一方、彼の周囲にいる女性たちは、度胸があり、行動力があり、非常に自立しています。ですが、思いつきで夢を追える純粋なジェイにも憧れます。男性の方が、夢のために他のものを捨てて、一心に向かっていけるものかもしれません。女性ほど現実的でないから、途方もない夢も追えるんだろうなぁと思いました。(JUL,2009)

#5Five Quarters of the Orange (2001)
『1/4のオレンジ5切れ』 那波かおり(訳) <角川書店・2007>
【あらすじ】food trilogy第三部。老女フランボワーズは小さな村へやってきて、クレープ屋を始める。実は彼女は、村を追い出されたダルティジャン一家の末っ子だった。
当時、ドイツ占領下にあったフランスの田舎村で、フランボワーズは厳しい母親に押さえつけられるように育てられた。母ミラベルは、オレンジの香りを感じると精神が不安定になり寝込んでしまう人だった。まだ9歳で世の中をよく知らず、負けん気が人一倍強かったボワーズは、ある日街で出会ったドイツ人トーマス・ライプニッツに強く惹かれていく。
だが、ある日突然悲劇は起こり、疑惑をかけられたミラベルと共に、一家は怒りと憎しみに満ちた村人たちから逃げ出す。
それから50年、ボワーズは自分の正体を隠し、愛する故郷へと戻ってきた。彼女には、誰にも明かすことができない恐ろしい秘密があった。

   

原書で読みました 【感想】話は年老いたFramboiseが幼なじみPaulと共に甥夫婦とやりあう現実と、幼かった頃の回想とが交錯して進みます。Harrisの英語にも2冊目にもなると慣れてきて、読みやすくなりました。この作品で異彩を放っているのはやはり母親のMirabelleと昔馴染みのPaulです。MirabelleはFramboiseにとって脅威の存在であり、昔のろまだったはずのPaulは意外にも頼りになる男性でした。

翻訳書で読みました 愛情表現が下手な少女が長い時を経て、秘密を解き放し新しい一歩を踏み出そうとするまでの物語です。無愛想でヒステリックな母親と同じ面を自分の中に見出し、ショックを受けるボワーズの気持ちには同感しました。母親の嫌いな部分を自分自身も受け継いでいると知り、嫌悪を感じた経験は私にもあります。今ではそれを受け入れ、母にはとても感謝しているし、少しでも親孝行したいと思っています。でもボワーズと同じ9歳の頃、ちょうど小学生高学年の時というのは、母親の深い愛情を知らず、反発ばかりが先立っていたような気がします。ボワーズは、抱きしめて愛情を表すということができなかったミラベルの真実を知るのに半世紀もの年月をかけてしまいました。でも、母というものは子どもを愛しており、娘もまた母のことを愛しているのだということに気づくのは少しでも早い方がいいと思います。早ければ早いほど、修復できるチャンスが多いのですから。この作品は、ボワーズが遠回りして気づいたいくつかの大事なことを教えてくれています。全体的にダークな雰囲気が漂っていますが、本物の愛とは何かを気づかせてくれる素敵な作品です。(DEC,2007)
#6Coastliners (2002)
南フランスの海に浮かぶ島、Le Devinが舞台。
#7Holy Fools (2003)
17世紀のフランス。
#8Gentlemen and Players (2005)
『紳士たちの遊戯』 古賀弥生(訳) <ハヤカワミステリ文庫・2008>
「真実と向かい合うには、勇気が必要なこともある。」(犯人に向けてストレートリーが語った言葉)
【あらすじ】伝統あるセント・オズワルド校を愛し、忠誠を尽くす老教師と、その学校を破滅させるために赴任した若手の教師。事件は2人の視点から交互に描かれる。百学期の永年勤続を間近に迎えたロイ・ストレートリーが受け持つ古典語学科は、コンピュータサイエンスにおされ、縮小を余儀なくされていた。それでも、いつもと変わらない新学期が始まったはずだった。だが、物の紛失、生徒の卒倒と数々の小さな事件が頻発する。例にならって危機を処理していく伝統校を、憧れと憎しみで染まった頭脳が巧みに陥れていく。

       

翻訳書で読みました 【感想】『ショコラ』などに見られた甘酸っぱい雰囲気はありませんが、読後に漂う香りはやっぱりジョアン・ハリスです。なごやかで、まろやかな心地でした。犯人は狂気じみているものの、過去の出来事が細やかに記されているせいか、一定の理解を寄せることができました。また、ストレートリーの魅力が結末を穏やかな方向へ導いているような気がします。歳を重ねているだけの経験と知己があり、心から学校と生徒のことを愛しています。彼のようなベテラン教師がいる学校は素敵だなと思いました。
ミステリや推理小説として捉えると少し物足りなさを感じますが、ジョアン・ハリスの一作品として読むと、今までと違った雰囲気を純粋に楽しめると思います。(JUL,2011)

#9Lollipop Shoes (2007)
『ショコラ』ヴィアンヌのその後を描いた続編。
#10Runemarks (2007)
北欧神話を元にしたファンタジー。
#11Blueeyedboy (2010)
インターネット上を舞台にしたサイコスリラー。
#12Runelight (2011)
"Runemarks" 続編。
#13Peaches for Monsieur le Cure (2012)
『ショコラ』から8年後、ヴィアンヌが再びランスクネ・スー・タンヌへ。
Different Class (2016)
『紳士たちの遊戯』続編。“Blueeyedboy”とも合わせて三部作をなす。

 

Collection +++

#1Jigs and Reels (2004)
#2A Cat, a Hat and a Piece of String (2012)

 

Others +++

The French Kitchen: a Cookbook (2002)
ハリス家によるフランス料理のレシピを集めた料理本です。

 

References +++