Kate Morton


ケイト・モートン

last updated: 5 September 2018

Biography +++

【生没】 1976.X.X - (辰年生まれ)
【家族】 母親は骨董商で親英家。3人姉妹の長女。
【故郷】 オーストラリアで生まれ育った。初めてイギリスを訪れたのは17歳のとき。
【影響を受けた作家、作品】 イギリスの児童文学作家イーニッド・ブライトン(Enid Blyton、1897-1968)。蒐集した1950年版のブライトン作品を今でも大切にしている。
ほかにグリム童話、C.ブロンテの『ジェイン・エア』、デュ・モーリアの『レベッカ』、R.レンデルの『死との抱擁』、ディケンズの『荒涼館』
【教育】 ロンドンで演劇を学んでいたが、奨学金に誘惑され、クイーンズランド大学で英文学を専攻する。19世紀の悲劇と現代ゴシック小説を専門とし、論文テーマはトマス・ハーディ(Thomas Hardy、1840-1928)についてだった。
【世界での人気】 前4作品の売上げが累計1000万部以上(出版社発表)。40か国以上で発売され、5作品全てが、ニューヨークタイムズやサンデータイムズのベストセラー入りを果たした。
【結婚・出産】 音楽家の夫Davin、3人の息子とロンドンで暮らしている。

 

Novels +++

#1The House at Riverton (2006)
1999年冬、75年前の詩人の自殺に関する映画を作るため、若いディレクターがリヴァトン館の元ハウスメイドを訪ねる。
原題はThe Shifting Fogだが、イギリスでの霧のイメージがロマンスと結びつかないために改題される。子どもがお昼寝をしている合間をぬって書かれたデビュー作。
【リンク:書評家・川出正樹さんによる評(Book Japan)】
【リンク:メイド研究者・久我真樹さんによる評】
『リヴァトン館』 栗原百代(訳) <武田ランダムハウスジャパン・2009/文庫・2012>

#2The Forgotten Garden (2008)
2009年Australian Book Industry AwardsのGeneral Fiction Book of the Year受賞。2012年本屋大賞翻訳小説部門3位。翻訳家が選ぶ翻訳ミステリー大賞第3回受賞。
モートンの祖母が21歳の時に父親から実の娘ではないと明かされた話と、夫の一家がスウェーデンからオーストラリアへ移住した航海の話をもとにして書かれた作品。
【リンク:『忘れられた花園 上下』が文庫化されます!(東京創元社のウェブマガジン今月の本の話題)】
【リンク:翻訳家・鴻巣友季子さんによる評(ALL REVIEWS)】

『忘れられた花園』 青木純子(訳) <東京創元社・2011/創元推理文庫・2017>
「その庭は、見つけてほしい人が現れるのを待っていたんだわ。」(下巻p.81)
1900年、イライザがロンドンの貧民街からコーンウォールにある伯父の屋敷へ連れてこられたところから、世紀を超えた物語は幕を開ける。そして2005年、コーンウォールのコテージを相続したカサンドラが、亡き祖母の出生の秘密を探るためにオーストラリアからイギリスの地へ向かった。

     

翻訳書で読みました3世代にわたる、自分の居場所探しの物語です。3人の女性がそれぞれ過去と向き合うことで、未来へ進みだそうとします。
20世紀のロンドン、オーストラリア、現代のコーンウォールを旅している気分になれました。しかも庭園付き・お化け付きの邸宅に泊まれます!1905年の門をくぐればイライザが笑顔でかけ寄ってきてくれ、1975年の扉を覗けばネルの姿があり、2005年のドアを開ければカサンドラが出迎えてくれます。
アフタヌーンティーならぬ、アフタヌーンノヴェルと呼びたい作品です。3枚のお皿に、ゴシックやサスペンス、ミステリー、ロマンス、ファンタジーなどが美しく並べられています。読み終えるとかなりの満足感を得られるので、続けてモートン作品を読むと胃もたれしそうです。間に向田邦子さんのエッセイでも挟むとちょうどいいでしょう。(May, 2018)
【幸福指数65%  陰鬱指数40%  恐怖指数20%  幻想指数0%】

【次に読みたい3冊】
1.作者が物語内に登場 『秘密の花園』 バーネット
2.こちらも過去の真実を追う物語 『抱擁』 A.S.バイアット
3.『レベッカ』感が物足りないと感じたら『エアーズ家の没落』 サラ・ウォーターズ

#3The Distant Hours (2010)
2011年Australian Book Industry AwardsのGeneral Fiction Book of the Year受賞。
子どものころに影響を受けた教師Herbertがモデル。
【リンク:洋書レビュアー渡辺由佳里さんによる評】

#4The Secret Keeper (2012)
2013年Australian Book Industry AwardsのGeneral Fiction Book of the Year受賞。翻訳家が選ぶ翻訳ミステリー大賞第6回・読者賞同時受賞。『このミステリーがすごい!2015年版』海外編第2位。
【リンク:翻訳家・鴻巣友季子さんによる評(ALL REVIEWS)】
『秘密』 青木純子(訳) <東京創元社・2013>

#5The Lake House (2015)
早川書房「ミステリが読みたい!」2018年版海外篇第2位。週刊文春ミステリーベスト10 2017年海外部門第3位。
【リンク:訳者自身による新刊紹介(翻訳ミステリー大賞シンジケート)】
【リンク:作家・宮部みゆきさんによる評(読売新聞)】
【リンク:ブログmarginalia評】

『湖畔荘』 青木純子(訳) <東京創元社・2017>
1つめの事件は、世界を震撼させたリンドバーグ愛児誘拐事件の翌年1933年、お屋敷で起こった赤ん坊の行方不明。2つめは、2003年に起こった母親の失踪事件。コーンウォールにある湖畔荘が、2つの事件を警察官セイディに引き合わせ、70年間の秘密と誤解を解き放つ。

     

翻訳書で読みました『忘れられた花園』と半分以上同じ材料を揃えたのに、異なる味わいの作品に仕上げられていて驚きました。主要な登場人物が警察官とミステリー作家で、クリスティへの言及も数回あり、ミステリー感が増しています。警察官セイディの直感で導かれる推理は何度も覆されますが、おかげで、名探偵を擁するミステリーの速すぎる展開についていけない私のような読者に親切なミステリーです。そして、挟み込まれる過去の物語で、事実確認もできます。
不穏な空気が立ちこめる冒頭からは想像できないくらい、穏やかで幸せな結末でした。上手くまとまり過ぎたとのご意見もありますが、フィクションだからいいじゃないですか。私は大好きです。ここまで優しい結末となったのは、母親の愛情によるものだと思います。
「われわれ人間は、どこでどうやって誰と生きていくかを自分で選べるとは限らないんだ。それに耐える勇気を、とても耐えられそうにないことにも耐える勇気を、与えてくれるのが愛なんだよ」(上巻p.105)
「愛とは相手を最優先で考えること、自分を捨てること、嵐のなかを漂うつぎはぎだらけの船が沈まないようにすることを意味する」(下巻p.191)
母親でもある私自身、ここまで自分を犠牲にはできないと恐れ入るほどの深い愛情があります。親への反抗期ピークを越えたあたりの子どもたちに読んでほしいので、本棚にさりげなく置いておいてください。(Sep, 2018)
【幸福指数80%  陰鬱指数20%  恐怖指数10%  幻想指数0%】

【次に読みたい3冊】
1.作家を夢見る少女アリスが、恋する相手に貸した本 『スタイルズ荘の怪事件』 クリスティ
2.リンドバーグ愛児誘拐事件をきっかけに書かれたクリスティの代表作『オリエント急行の殺人』
3.母親なりの愛と苦しみを感じられる作品『破壊者ベンの誕生』 ドリス・レッシング

#6The Clockmaker’s Daughter (2018)