Minette Walters


ミネット・ウォルターズ

last updated: 3 August 2017

Biography +++

【生没】 1949.9.26 - (丑年生まれ)
【家族】 陸軍所属だった父親は、ウォルターズ11歳の時に他界。
【教育】 父の死後、クリスティーと同じGodolphinの寄宿学校へ。
【結婚・出産】 29歳の時に結婚。2人の息子を授かる。
【仕事】 ダラム大学卒業後、雑誌編集者として働きながら、ロマンス小説や短編を執筆して収入を補った。
2人目の息子が手を離れた37歳の時に『氷の家』執筆を開始。2年かけて書き上げたが、何社もの出版社に断られ、最終的にマクミラン社が1250ポンドで買い取った。だが、受賞をきっかけに海外の出版社10社以上から声がかかり、半年で数か国語に翻訳される。
【功績】 デビュー3作で主なミステリ文学賞3冠を獲得した初めての作家。

 

Bibliography +++

#1The Ice House (1992)
『氷の家』 成川裕子(訳) <東京創元社・1994/創元推理文庫・1999>
英国推理作家協会賞、John Creasey for Best First Crime Novel Award受賞。1997年BBCドラマ化。
【あらすじ】ある屋敷の氷室で、身元判別が不可能な死体が発見された。その屋敷では10年前にメイベリー失踪事件が起こり、未解決のままとなっていた。当時、容疑者として挙げられたのが妻のフィービだった。失踪事件に関っていたウォルシュ主席警部は、死体をメイベリーであると決めつけ、今度こそフィービを逮捕しようと躍起になる。屋敷に住む3人の女性と使用人夫婦は、警察に徹底的に非協力的で、フィービを守ろうとしているかのような言動をとる。その挑発的な発言や、周囲の卑劣な噂のせいで、彼女らに敵意を抱いたマクロクリン部長刑事だったが、冷静な観察眼でやがて真相へと近づいていく。

         氷つながりでこちらも→ 『氷』 A.カヴァン

翻訳書で読みました 【感想】最たる謎は、死体は一体誰なのかということです。ですが、話はそんなにシンプルなわけではありません。女性たちの言動が謎のベールのように事件全体を包んでいて、なかなか真実にたどり着けませんでした。彼女たちの嘘は、自分たちをいい風に見せたいがためについているものではないのです。嘘や噂に惑わされない者だけが見つけられた真相。『氷の家』を読んでいると、安易に風の噂を信じず、事実を見極めることのできる人物が最も信頼できるということを改めて感じました。
最期まで読み終えて答えが分かった状態で、もう一度読み直したいと思いました。死体の描写がかなりリアルで、思わず読み飛ばしましたが、それでも読み返したいと思わせてくれるだけの魅力を持った作品です。(July,2010)

#2The Sculptress (1993)
『女彫刻家』 成川裕子(訳) <東京創元社・1995/創元推理文庫・2000>
「わたしたちはみな、自分の運命は自分で決めているの」 アメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀長編賞受賞。1996年BBCドラマ化。1996年「このミステリーがすごい!」海外部門1位獲得。
【あらすじ】フリーライターのロズ(ロザリンド・リー、36歳)は、5年前の殺人事件に関するノンフィクションを書く仕事を押し付けられた。抵抗する母と妹を切り刻み、それらを並べ直して台所を血まみれにしたオリーヴ(28歳)は無期懲役に服している。こわごわ刑務所へ会いに行ったロズは、以外にもオリーヴは見かけこそ巨大で恐ろしいが、正常でなかなか聡明である印象を受けた。事件に関する情報があまりにも少ないため、ロズは自らの足で聞き込みを始める。弁護士や事件当時の隣人・校長・旧友そして現在はレストランを経営している、オリーヴを捕まえた警察官ハルなどの話を聞いていくうちに、矛盾点が次々と浮かび上がってきた。果たしてオリーヴは本当に母妹を殺したのか?

     

翻訳書で読みました 【感想】複雑に入り組んだ事情がてんこもりって感じです。事件現場の描写が生々しいので、想像力豊かな人は気持悪くなってしまうでしょう。ロズが事件の真相を突きつめていく過程と彼女自身の恋愛事情の二つが中心となり、もちろんその二つも絡み合っています。もう何が真実で嘘なのか分からなくなっていきます。それがウォルターズの狙いなのかもしれませんが。しかも最大の謎は解けない結末になっています。個人的事情で不安定だったロズが、調査を進めていくうちに、だんだんと自信を持ち、魅力的になっていってくれたのが唯一の救いでした。

#3The Scold's Bridle (1994)
『鉄の枷』 成川裕子(訳) <東京創元社・1996/創元推理文庫・2002>
1994年英国推理作家協会賞受賞。1998年BBCテレビ化。
【感想】老女マチルダ・ギレスピーが頭にスコウルズ・ブライドルを被って死んでいたことから事件は始まります。ほとんどの村人から嫌われていた彼女を殺す動機はいたるところに転がっています。さらにこの事件を軸として、他にも様々な問題が同時に明るみになっていきます。マチルダと親しくしていたブレイクニー夫妻のいざこざ、マチルダの孫ルースの秘密、マチルダ自身の過去など目が離せません。どの人物もとても表情豊かに描かれていて、読んでいても状況が目の前に浮かび上がります。クーパー部長刑事もただの刑事としてだけではなく、一人の男性として心情が丁寧に表現されています。中でも一番鮮やかだった人物がジャック・ブレイクニーでした。ぜひ読んで確かめてください。ミステリーという枠を越えた、非常に魅力的な作品です。

     

#4The Dark Room (1995)
映画化「第一発見者」(監督:グラハム・シークストン 出演:デルバ・キールワン 1999・英)
『昏い部屋』 成川裕子(訳) <東京創元社・1999/創元推理文庫・2005>
#5The Echo (1997)
1998年BBCドラマ化。
『囁く谺』 成川裕子(訳) <創元推理文庫・2002>
#6The Breaker (1998)
『破壊者』 成川裕子(訳) <創元推理文庫・2011>
The Tinder Box (1999)
中編小説。
「火口箱」 成川裕子(訳) 雑誌『創元推理19 夢のような探偵小説について』<東京創元社・1999>に収録。同誌には、「ミネット・ウォルターズのドラマ化ビデオについて」という記事も掲載されています。
#7The Shape of Snakes (2000)
2005年「本格ミステリ・ベスト10 海外本格ミステリ編」第3位。
『蛇の形』 成川裕子(訳) <創元推理文庫・2004>
#8Acid Row (2001)
2001年英国推理作家協会賞(CWA)ゴールドダガー賞最終候補作。シングルマザーや捨てられた子どもたちが集まる、社会から隔離された場所に焦点を当てた問題作。
『遮断地区』 成川裕子(訳) <創元推理文庫・2013>
#9Fox Evil (2002)
『病める狐』 成川裕子(訳) <創元推理文庫・2007>
2002年英国推理作家協会賞受賞。

         

翻訳書で読みました 【感想】英国陸軍の大尉ナンシーの元に弁護士が訪ねてくる。弁護士マークの意に反して、彼女は非常に知性的な女性で満ち足りた暮らしを送ってきたために、彼が口にしたロキャー・フォックスという名も何の価値もなさなかった。だが見るからに、ナンシーはロキャーフォックス家の主ジェームズの孫娘であった。一方、ジェームズは誹謗中傷と無言が繰り返されるいたずら電話に毎夜悩まされていた。また、静かなシェンステッド村にはトラヴェラーの一行がやってくる。彼らのリーダーは、フォックス・イーヴルと名乗り、この村やジェームズ一家のことを熟知していた。そんな中、引き寄せられるようにナンシーがジェームズの元へやってくる。

 実はナンシーは、ジェームズの娘エリザベスが産んだ父なし子なのですが、すぐに養子に出されました。ですが、そんな境遇などものともせず、知性と優しさを併せ持った彼女は、非常に美しく力強く感じられました。彼女の父親が誰なのかという謎は、この小説が秘めている数多い謎のひとつですが、知らない方が幸せな真実もあるということをこの作品は教えてくれます。

#10Disordered Minds (2003)
#11The Devil's Feather (2005)
『悪魔の羽根』 成川裕子(訳) <創元推理文庫・2015>
【あらすじ】2004年、ロイター通信の記者コニー・バーンズは、悪化するイラク情勢の取材中に、バグダッドで拉致監禁された。犯人はマッケンジーという男で、2年前にシエラレオネで起きた連続婦女殺害事件の真犯人だとコニーが疑っている人物。
解放された後、コニーはイギリスのドーセットの村に隠遁し、マッケンジーに怯えながら暮らす。そこで出会ったジェスは不愛想で無口な女性だったが、2人は交友を深めていく。同時に、ジェスが面倒をみていた老女リリーにまつわる謎が明かされていく。
そこへとうとう、マッケンジーが現れた。

 

翻訳書で読みました 【感想】頭がよくて、言葉巧みな女が最恐、だと思いました。コニーがまさしくそうです。話の前半は、彼女の怯えがリアルに伝わって、私自身も夜1人で寝室へ向かう時など、死角から男が出てくるかもという恐怖を感じたくらいです。ところが一転、後半はあまりに冷静に、時には楽しんで警察やジェスの天敵を言い含めていきます。コントラストの強いツートンカラーのような変貌ぶりです。
マッケンジーの最後に関する真相が、語られないまま終わります。ウォルターズあるあるですね。読者の推理に委ねられます。あなたなら、どんな真実を見出しますか?(AUG・2017)
【幸福指数 20%  陰鬱指数 70%  恐怖指数 120%  幻想指数 0%】

Chickenfeed (2006)
中編小説。
#12The Chameleon's Shadow (2007)
Innocent Victims (2012)
中編小説ChickenfeedとThe Tinder Boxを収録。
『養鶏場の殺人/火口箱』 成川裕子(訳) <創元推理文庫・2014>
#13A Dreadful Murder (2013)
中編小説。
#14The Cellar (2015)
#15The Last Hours (2017)

 

References +++