P.D.James


P.D.ジェイムズ

last updated: 12 July 2017

Biography +++

【生没】 1920.8.3 - 2014.11.27 (申年生まれ、享年94歳)
【家族】 国税専門官である父の反対で大学へは行かず、16歳で就職する。
【仕事】 1949年から国民保健サービス(NHS)で、1968年からは内務省の警視庁などで公務員として働き、1979年に定年退職。
40代で一念発起し、仕事のかたわら創作に励む。初めは純文学作家を志向していた。
【結婚・出産】 1941年、6歳年上の医者Alan Cameronと結婚。夫は第二次世界大戦後、精神を患って入院を繰り返し、64年に死去。その後は、女手一つで娘2人を育てた。
【功績】 1983年にOBE(大英帝国勲章四等勲爵士)受勲。1987年CWAダイアモンド・ダガー受章。1991年、一代貴族の「ホランド・パークのジェイムズ女男爵Baroness James of Holland Park」に叙される。1999年、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)で巨匠賞受賞。

 

Bibliography +++

#1Cover Her Face (1962)
通勤列車の中で執筆。ダルグリッシュ・シリーズ1。
『女の顔を覆え』 山室まりや(訳) <早川書房・1977/ハヤカワミステリ文庫・1993>
#2A Mind to Murder (1963)
ダルグリッシュ・シリーズ2。
『ある殺意』 山室まりや(訳) <早川書房・1977>/青木久恵(訳) <ハヤカワミステリ文庫・1998>
#3Unnatural Causes (1967)
ダルグリッシュ・シリーズ3。
『不自然な死体』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ・1983/ハヤカワミステリ文庫・1989>
#4Shroud for a Nightingale (1971)
『ナイチンゲールの屍衣』 隅田たけ子(訳) <ハヤカワポケットミステリ・1975/ハヤカワミステリ文庫・1991>
ダルグリッシュ・シリーズ4。1971年CWAシルバーダガー受賞。1984年Roy Marsden主演でテレビドラマ化。P.D.ジェイムズの病院での勤務経験が活かされた作品。
【あらすじ】ジョン・カーペンダー病院の看護婦養成所ナイチンゲール・ハウスで、実習訓練中に患者役の看護学生ピアスが突然苦しみだし、死んだ。続いて、同じ学生のファロンも部屋で死んでいた。ピアスを殺した罪のつぐないとしてファロンが自殺したのだと考えられる中、スコットランドヤードからやってきたダルグリッシュ警視。彼の巧みな聞き込みにより、ピアスのゆすり癖、ファロンの図書カードなど、パズルのピースが少しずつはめられていく。

   

翻訳書で読みました 【感想】他の看護学生や、婦長、教官、外科医など誰もが犯人として疑わしく思えてきます。事件はとても複雑に展開して、一つ一つ書いてでもして整理していかないと、大変ですよ。P.D.ジェイムズの作品はこれで3作目なのですが、ダルグリッシュものは初めてでした。でも、いまいちキャラがつかめなかったですね。これといった詳しい描写がなかったせいだと思うんですが。しかも、事件の真相を堂々とダルグリッシュがみんなの前で語るといったような、お決まりの解決シーンはなく、最後はあれよあれよいう間に終わってしまいます。ちょっと拍子ぬけしちゃうかもしれないですね。

The Maul and the Pear Tree: The Ratcliffe Highway Murders 1811 (1971)
T.A.クリッチリーとの共作。ノンフィクション。
ラトクリフ街道の殺人』 森広雅子(訳) <国書刊行会・1991>
#5An Unsuitable Job for a Woman (1972)
『女には向かない職業』 小泉喜美子(訳) <ハヤカワポケットミステリ・1975/ハヤカワミステリ文庫・1987>
1998年TVドラマ化。
映画狂のミステリ作家、小泉喜美子の思い出

         

翻訳書で読みました 【感想】コーデリア・グレイ探偵のデビュー作です。P.D.ジェイムズ作品中最も親しまれている1冊です。ほとんど経験もない若い女性には探偵なんて向いていない。どの人からもそんな言葉を浴びせられる中、コーデリアは一人で立派に初めての事件を終えました。そもそも探偵事務所の共同経営者だった元犯罪捜査官のバーニイが自殺してしまったことから、彼女の苦労が始まりました。一人で私立探偵をやっていこうと決意を固めたところに舞い込んできた仕事が、カレンダー卿の息子マークが自殺した理由を調べて欲しいというものでした。持ち前の才気と頭の回転の速さを最大限に活用して、全身全霊で事件に立ち向かう姿勢にはエールを送ってしまいました。調査や推理がたどたどしい分、読者もしっかりついていけて知らない間に取り残されているということがありません。コーデリアと共に一喜一憂し、殺人の恐怖に震えます。途中事件解決をあきらめそうになったり、危うく殺されそうになったりしますが、最後には殺人の偽装工作までやりきってしまいます。ミステリー初心者でも楽しめる作品だと思います。P.D.ジェイムズの他の作品に登場するダルグリッシュ警視も出てきます。

#6The Black Tower (1975)
ダルグリッシュ・シリーズ5。1976年CWAシルバーダガー受賞。
『黒い塔』 小泉喜美子(訳) <早川書房・1976/ハヤカワミステリ・1980/ハヤカワミステリ文庫・1994>
#7Death of an Expert Witness (1977)
ダルグリッシュ・シリーズ6。
『わが職業は死』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ・1981/ハヤカワミステリ文庫・2002>
Dorothy L. Sayers: From Puzzle to Novel (1978)
P.D.ジェイムズによる、ドロシー・セイヤーズ論。
「パズルからノヴェルへ ドロシイ・セイヤーズ論」 浅羽莢子(訳) 『ミステリマガジン No.285』<早川書房・1980>
#8Innocent Blood (1980)
『罪なき血』 青木久恵(訳) <早川書房・1982/ハヤカワミステリ・1988>
実の母親は、殺人犯だった。
【あらすじ】上流家庭で養父母に育てられたフィリッパ(18歳)は、実の両親のことを調べ、恐るべき事実を知る。それは実父が幼女暴行犯として獄中で死に、実母が幼女殺人罪で服役中という事実だった。だが、自分を実験材料のように育ててきた養父モーリスに対する反発もあり、フィリッパはまもなく出獄する実母メアリ・ダクトンと共に暮らすことにする。2人は口数は少ないながらも、平穏な生活を送り始める。一方で、メアリに娘を殺されたノーマンという男が、密かに2人の居場所を探り、彼女を殺す計画を進めていた。

   

翻訳書で読みました 【感想】途中で随分と間があいてしまったりして、読み切るのに長い期間がかかったのですが、最初の内容を忘れてしまうようなことはありませんでした。実の親が殺人犯だという設定が非常に刺激的なせいでしょうか・・・。ですが、その後の展開はもっと刺激的です。自分が養女となったいきさつを知らされたフィリッパの衝撃と痛みは、出生の真実を知ったときよりも強かったように感じました。また、随所に光る彼女の知性、頭の回転の速さには惚れ惚れしましたが、冷静さを欠いてしまったが故に過ちを招いてしまう姿を通して、まだ若い、人間としての未熟さも描かれています。

#9The Skull Beneath the Skin (1982)
コーデリア・グレイ2作目。
『皮膚の下の頭蓋骨』 小泉喜美子(訳) <早川書房・1983/ハヤカワミステリ文庫・1987>
#10A Taste for Death (1986)
1986年CWAシルバーダガー受賞。1987年Macavity Award Best Mystery Novel受賞。ダルグリッシュ・シリーズ7。
『死の味』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ・1987/ハヤカワミステリ文庫(上下)・1996>
#11Devices and Desires (1989)
ダルグリッシュ・シリーズ8。
『策謀と欲望』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ・1990/ハヤカワミステリ文庫(上下)・1999>
#12The Children of Men (1992)
『人類の子供たち』 青木久恵(訳) <早川書房・1993/ハヤカワミステリ文庫・1999>
『トゥモロー・ワールド』 青木久恵(訳) <ハヤカワミステリ文庫・2006>
1992年Deo Gloria Award受賞。2006年映画化『トゥモローワールド』(監督:アルフォンソ・キュアロン(『ハリーポッターとアズカバンの囚人』監督))
【あらすじ】2021年、地球上で子どもが生まれなくなって四半世紀が過ぎた。人類の絶滅を前に、イギリスでは国守ザンが絶対的権力を握っている。ある日、ザンの唯一の血縁者であるセオは、5人の反体制グループから独裁政治の真実を知らされる。メンバーの一人が捕まり、セオは彼らの逃亡生活に巻き込まれてしまう。

   

翻訳書で読みました 【感想】異色のSFものです。別に難しい機器や戦闘場面があるわけではないので、特にSFを気にする必要はありません。結末は、赤ん坊の誕生とザンの死で幕を閉じますが、この新しい生命のために何人の大人が犠牲になったのでしょか。母親として当然のわがままとはいえ、ザンの元で出産していればセオも不要な殺人を犯すことはなかったのです。多くの死の元に生を受けた赤ん坊は、この先どんな人生を送ることになるのでしょうか。現実に起こりうる設定だからこそ、読み終わった後、いろいろと考えさせられた作品です。

#13Original Sin (1994)
ダルグリッシュ・シリーズ9。
『原罪』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ(上下)・1995/ハヤカワミステリ文庫(上下)・2000>
#14A Certain Justice (1997)
ダルグリッシュ・シリーズ10。
『正義』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ(上下)・1998>
Time to Be In Earnest (1999)
自叙伝。
#15Death in Holy Orders (2001)
2002年Barry Awardにノミネート。ダルグリッシュ・シリーズ11。人里はなれた全寮制神学校で、学生が不審な死を遂げる。
『神学校の死』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ・2002>
#16The Murder Room (2003)
ダルグリッシュ・シリーズ12。有名殺人事件をあつかう博物館で、昔の事件と告示した殺人事件が起こる。
『殺人展示室』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ・2005>
#17The Lighthouse (2005)
ダルグリッシュ・シリーズ13。
『灯台』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ・2007>
#18The Private Patient (2008)
ダルグリッシュ・シリーズ最終作。
『秘密』 青木久恵(訳) <ハヤカワポケットミステリ・2010>
#19Death Comes to Pemberley (2011)
オースティン作『高慢と偏見』の6年後を描く。
『高慢と偏見、そして殺人』 羽田詩津子(訳) <ハヤカワポケットミステリ・2012>

 

Short Stories +++

"A Very Undersirable Residence"
『豪華美邸売ります』 小泉喜美子(訳) 「ある魔術師の物語 イギリスミステリ傑作選1978」<ハヤカワミステリ・1980>に収録。
"The Girl Who Loved Graveyards"
『墓地を愛した娘』 中村保男(訳) 「叔父さんの女 イギリスミステリ傑作選1983」<ハヤカワミステリ・1985>/「現代イギリスミステリ傑作集3」<ハヤカワポケットミステリ・1988>に収録。
"A Very Commonplace Murder"
『いともありふれた殺人』 深町眞理子(訳) 「ディナーで殺人を」<創元推理文庫・1998>に収録。
"Great-Aunt Allie's Fly-Papers"
『大叔母の蝿取り紙』 真野明裕(訳) 「13の判決 イギリスミステリー書き下ろし傑作集」<講談社文庫・1981>に収録。
"Ought Adam to Marry Cordelia?" (1977)
『アダムはコーデリアと結婚すべきか?』 間山靖子(訳) 「ミステリー雑学読本」<集英社・1982>に収録。

 

References +++